先日、友人からある知らせが届きました。
カナダ・バンクーバーの地方紙のリンクが張られたメッセージ。
その見出しは以下の通り。

”Gastown’s iconic bar “The Cambie” is closing down in November”

( https://www.straight.com/food/1257941/gastowns-iconic-bar-cambie-closing-down-november )

二十歳の頃、カナダのバンクーバーで生活していました。
留学とも言えず、英語の勉強かといわれると机に向き合った時間はそうなかった。
ただ、他の文化の中に溶け込み生活してみたかっただけで、理由はただそれだけ。
とにかく衝動的に、バイトしながらとりあえず生きていくという目標だけたてて旅立ちました。

1ヶ月ちょっとだけ語学学校にいって、後はひたすら職探しの日々。
せっかく来たんだから日本語の通用しないところで、というルールだけ頑なにこだわり続け$1.25のピザとトマトスープで粘り続けて見つけた仕事先が、上の記事の “The Cambie”のカフェでのお仕事でした。(本当は皿洗いでも良かった)

The cambieはバンクーバーで最も古い、ホステルとカフェを併設したパブ。
日本でも最近見かける1階が酒場になっていて、その上にホステルがあるといったあのスタイル。
ネットで応募した僕は、実際にお店に行ってびっくり。
レンガ造りの建物に、馬の餌場、禁酒法があった時代の密造庫へとつながる地下道(幽霊が出る)といろいろと映画のセットのようなその場所に初めて行った時は興奮しっぱなし。

大きな酒場ともあり週末には人があふれるほどの人が押し寄せ、世界中のバックパッカーたちが集まってくるそれはもう賑やかな場所。

場所柄もありそこで働くスタッフも色とりどり。人種も、性別も、宗教も、思想も。
バンドマン、シェフ、グラフィックアーティスト、パン職人、カメラマン、CGIデザイナー様々なバックグラウンドを持つスタッフが大勢いいて、それぞれの目標に向けてそこで働いていました。

二十歳の僕には、とにかくとても刺激的な環境だったのです。

ある日、グラフィックデザインをやっている同僚に作品を見せてもらうことがあり、その時になんとなく口から出てきた「自分もやってみたい」みたいな一言。

それに彼は
”Do it.
で、片付けた。

その時の戸惑いの入り混じった、不意を突かれた様な感覚は今でも新鮮に思い出せる。
思えばあの時、自分の中で何かが変わった気がするのです。

そんな場所が無くなる事になった。
油の様にこびり付く、色濃い思い出が詰まった場所。自分の中の一部がひとつ無くなってしまう様な感じがした。
奇しくもその知らせを受けたのは先日の22日。
NO AGEの新たなスタートの日でした。

一つが終わって、また一つが始まる。
そんなシンプルなことだけれど、嬉しくも寂しくもある不思議な日になりました。
万物がすべて流転するのであれば、あそこに僕がいた残像もきっとこのお店に受け継がれていくのかな。”感覚のサイクル”―その場所や、物に染み付く個人の記憶をまた次へのサイクルヘ。そんなぼんやりとしたインスピレーションを残してくれる出来事でした。

SNFUのMr. Chi Pigとトイレで立ちション(ごめんなさい)しながら、世間話したこと。
映画のワンシーンみたいな日常の連続だったなぁ。なんて。

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Posted by:noage

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